岩合光昭さんのネコ写真に、言葉が添えられて、ビジュアル絵本のような形で出されています。
2016年1月の第1刷発行で、クレヴィス社です。夜明けの時間から始まり、夕暮れの時間まで。
その時々の猫を撮りながらのコメントが効いています。「あとがき」を紹介します。
頬と頬を寄せているネコたちがいます。朝の光線が輪郭を浮かび上がらせます。さあ、出かけようぜ、という挨拶でしょうか。全身の五感をフルに使って、どちらに行くかを決めているようです。それは日の向き次第であり、良い匂いが漂ってくる方向でもあるようです。また、オスにとっては縄張りへの朝のパトロールの始まりであり、メスにとっては子ネコの待つ巣穴へ帰る合図かもしれません。それぞれのネコにそれぞれの時間があります。
それは時計の単位ではない、わたしたちが忘れてしまっている太陽や月やその他の自然が織りなす一瞬を、ネコの体の動きからハッとさせられるような感覚の時間といってよいのかもしれません。動くことは生きること、生きることは永遠へと引き継がれる命のゆるやかな時、これからも見つめ続けていきたいと思います。
「それぞれのネコにそれぞれの時間があります」。
私たちにもひとりひとり、それぞれの時間があるのですね。普段忘れがちですけれど。
もちろん、社会で生きて行くためには、「決められた時間」に合わせるところも出てきますが、…若いうちは、それが大半でしょうけれど、でも、時には「太陽や月やその他の自然が織りなす一瞬」を感じる時間を持った方が豊かですね。
憂いは、過去に起きた出来事を後悔したり、未来に不安を感じたり、いずれにせよ、「今、ここ」でないことは確かです。
ネコたちは、「今、ここ」にいるからこそ、伸びやかなのでしょう。
最後のページの写真が、またステキなので、紹介します。海を眺めているネコのシルエットです。(「明日があります。」というコメント付き。)
