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  1. コラム
  2. 沙羅 Sara の「ほっと一息」コラム
  3. 心理療法
 

沙羅 Sara の「ほっと一息」コラム

沙羅 Sara の「ほっと一息」コラム
日々の暮らしの中で、ちょっと気づいたこと、ほっと一息つけるようなことがらをコラムとしてまとめました。
あなたの「お役立ち」になるかどうか、心許ないですが、興味を持った「カテゴリー」から読んでみてくださいね。

カテゴリーごとに選べます。
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心理療法
2017/03/18
KSCC統合的心理療法セミナー(5)ーW講師による、ケース スーパービジョンー  
最後に、東豊先生と野末武義先生による「ケーススーパービジョン」に入りました。「臨床事例」は、「夫の定年を前にして、家事を教えようとする妻が、なかなか上手くならない夫に対して苛立ってしまう」というものでした。最初は妻一人でカウンセリングに来たけれど、「夫も連れて来ます」ということで夫婦でのカウンセリングになったということでした。

事例報告者から逐語的な記録が提示され、3パートに分けて、随時に参加者から質問を受け付けたり、二人の講師からのコメントがあったりしました。(資料は、研修後回収)

まず、最初の部分で、東先生から「家族の構成メンバーが知りたい」との質問がありました。これは、「今後、誰がどう動く子どができるか?」を確認するためだと言われました。家族構成は夫婦以外に、長女、長男で、両方共30代。まだ結婚はしていない、とのことでした。仕事もしていて、両親には余り関わってこない、ということでした。

野末先生は、「夫は、どのように妻に言われて、それをどう思ってカウンセリングに来たのか?」と聞かれました。「妻から、もっとできるはずなのになかなか出来ない、それで困って相談に行きたい」と言われ、それに夫も同意している、とのことでした。続けて、「なんでこの段階で来たんだろう?」と質問されました。妻の両親は健在かどうか、聞かれました。つまり、「親の亡くなった年齢に近くなったら鬱っぽくなる人もいる」ということで、それを気にかけていらっしゃいました。「それともempty nest?」と言われたので、ん? empty nest?空の巣症候群? ああ、何か喪失体験を言われているのか、と思いました。妻の両親は、妻の最初の結婚時には健在だったようですが、上の子が生まれた時に亡くなった、とのことでした。ここで、妻は今の夫とは再婚で、姉は、先夫との間にできた子であることがわかりました。(夫は初婚)
その他、野末先生からは、「セラピストはふたりとも、うなづけることを最初に言うことが大切」という指摘がありました。

次の部分で、妻の夫に対するDVが出て来ました。すぐさま東先生から、「あなたはそのままカウンセリングを続けたのですか? 僕ならもうここでアウトですよ。」と言われました。継続するなら「暴力をしない、という契約のもとでセラピーを継続する」と。契約できないなら、セラピーは打ち切りだし、DV対策も含め、対応できるところにリファーする、と言われました。

東先生の強い語調に、私を含め参加者は、ちょっと、え? という反応だったと思うのですが、引き続き先生が「だって、そうでしょう? これが、夫から妻への暴力だったら、皆さんすぐにDV、と思って対応するでしょ? なのに、妻から夫ならいいんですか? まあいいか、になるんですか? それは、明らかにジェンダーバイアスがかかっているでしょう?」と言われて、ハッとしました。

「皆さん、よろしいですか、セラピストの陥りやすい間違いは、共感することを訓練されているから、『この人もこの人なりの傷つきがあるのだから、と暴力を甘く受け止めてしまうことですよ。『受容』『共感』に反すると思うからでしょうか?」

「妻自身が、暴力的な家庭に育ったのでしたね。そうすると、『子どもの時に嫌だったことを、今自分自身がやっている。そのことをどう思うのか?』と妻に問うべきなんですよ。そうでないと不適切な養育の反復が起こる。」

「ダメなことはダメと言うことで、関係が深まるのですよ。」

野末先生からも「暴力を振るう前に何が起こっているかを見る必要がある。怒りの前に傷つきがある。『暴力を続けていると二人の関係を壊すことになるけれど、その覚悟はあるのか』と聞く必要がある。悪循環を作っているのは妻なのだから。」という言葉がありました。「『暴力を振るって、結果、何かいいことはあったのか?』とメタ認知させることも必要」と言われました。

さらに、野末先生からは、「もう少しセラピスト主導でいいのではないか? 夫婦合同面接と個人面接とを組み合わせ、妻の個人面接だけでするという選択があっても良かったのでは」とのコメントでした。「夫との個人面接では、どのように妻と関わるか、アサーション的な関わりを勧めること、また、『暴力を受けている、この関係でいいのか? どこまでそれに付き合うのか?』を夫に聞く必要がある」と言われました。

最後の部分からは、妻の躁鬱が疑われる状態が示され、参加者からも医療機関との連携はできないのか、といった質問もありました。

野末先生は「妻の鬱ってどんなものなのか、源家族の時のキズつき? 個人としてのキズつき? それを聞いてみて、本人が触れたくないようなら『なぜ触れたくないのか』と聞く必要がある」と言われました。野末先生が(これとは別に)合同面接のトレーニングを見ていて、傾向として「なぜ、それ以上聞かないの?」と思われることが多々あるそうです。クライエントの話される言葉だけを拾ってそのまま受け止めてしまう。「踏み込み過ぎ」を恐れるのか? と。

「エモーション・フォーカスト・セラピー」はそうじゃないはず。丁寧に関わるということは言ってないことに触れないことではない。それは本当の受容でも、本当の共感でもない。

また、「循環的に何が起こっているか」への気づきを促すこと、「結局は本人にとってプラスのことはない」に気づかせることも、「共感」になる、と。「クライエントの視野を広げる」こともセラピストに必要なことで、それは次へのステップになる、と。

他の事例として、「親に謝罪させたい」と要求してきたクライエントに対して、断った、という話をされました。「自分のやっていることが自分にとってプラスになっていない」ことをきちんと伝えたそうです。

東先生は、「限界設定が必要」という話をされました。それはまず、セラピスト側の問題として、「問題と思う意識が出てくるものは、自分が苦手としているものなんだ」ということだそうです。それは悪いことではなく、人間誰しもオールマイティーではない、とのこと。その場合、リファーできる関係機関を数多く持っているか、が大事だと。そして、リファーする場合は、クライエントにもそのことを聞くこと、と。

あっという間の2時間半でした。本当に考える視点をたくさんいただいた、実り多い時間でした。

画像は、自宅の階段。お気に入りのミュシャのリトグラフが、下半分になってしまいました。

補注)エモーション・フォーカスト・セラピー
感情とはいわば「自己の内なる他者」であり、自己を破壊するものにも自己を構成するものにもなりうる。EFT(エモーション・フォーカスト・セラピー)は、神経科学や基礎心理学の最新知見、「空の椅子の対話」「二つの椅子の対話」という特徴的な技法、多様な心理療法の統合によって、この感情という未知の領域を踏み分け、感情調整を試み、かつてない自分に変容するための好機(chance)としていく。EFTの創始者は、レスリー・グリーンバーグ。

補注に対する感想)う〜ん…エンプティチェアー(空椅子)は、ゲシュタルト療法ではなかった? レスリー・グリーンバーグって何者?  もうちょっと調べます。




心理療法
2017/03/17
KSCC統合的心理療法セミナー(4) ー野末 武義 先生 ③ー  
個人面接と夫婦・家族合同面接の比較をするにあたって、まず、それぞれの「メリット」と「難しさ・留意点」を整理されました。それは次のとおりです。

<個人面接のメリット>
  ・  目の前にいるクライエントの語りに集中することができ、観察も複雑ではない。
  ・  信頼関係を築くことはさほど難しくない。
  ・  クライエントは家族の反応を気にしないで自由に話をすることができる。
  ・  セラピストは、クライエントと家族との葛藤や衝突に直接介入する必要はない。
  ・  クライエントと家族との境界を明確にすることができる。
  ・  セラピストは、自分の価値観とクライエントの価値観が違っていたとしても、クライエントに合わせて尊重することはさほど難しくはない。

 <個人面接の難しさと留意点>
  ・  クライエントが語る家族像や家族との関係は、あくまでもそのクライエントにとっての心的現実であり、実際の人物や関係とは異なることが珍しくない。
  ・  クライエントと家族との実際の関係やコミュニケーション・悪循環を観察することができない。
  ・  クライエントと家族とのコミュニケーション・悪循環に直接介入できないので、クライエントが変化するしかない。
  ・  クライエントの感情や認知が変化しても、家族との関係は変わらないことがある。
  ・  クライエントの肯定的な変化は、家族には否定的に捉えられることがある。
  ・  セラピストがクライエントやパートナーとの関係に与えている影響を意識化しにくい。
          ①  うなずきもクライエントに影響を与える。
          ②  セラピストとクライエントが秘密を共有することによるパートナーの排除
          ③  見えない三角関係に巻き込まれる危険性:セラピストが促進する離婚(therapist–assisted divorce)

いやあ…、これにはびっくり! でした。最初の「心的現実」は認識していましたが、それ以外の指摘は、ホント目から鱗、でした。特に最後の項目は、そうなのか…と、考え込んでしまいました。

<夫婦・家族合同面接のメリット>
  ・  一人ひとりの言い分を公平に聴くことができ、それぞれの違いも明確になる。
  ・  クライエントと家族の個人としての特徴や、コミュニケーション・悪循環を直に観察することができる。
  ・  セッションの中で夫婦・親子の関係や葛藤に直接介入し、変化をもたらすことができる。
          ①  語りの少ないメンバー、パワーの弱いメンバーの自己表現の促進
          ②  語りすぎるメンバー、パワーの強いメンバーの聴く姿勢の促進
          ③  より公平な関係へ:衝突・喧嘩から対話へ
  ・  複数のメンバーに同時に同じメッセージを伝えることができる。
  ・  関係の中での自己理解・他者理解・関係性理解の促進
  ・  セラピストの関わり方が、家族と関わる時のモデルとなる。
  ・  症状を抱えている個人のサポート資源として家族の理解や協力を得られやすくなる。

この中での私の発見は、「セラピストの関わり方が、家族と関わる時のモデルとなる」ということでした。…そうなんですね。セラピストは「関わり方のモデル」を体現しているのですね。…確かに。言われてみればそうなのですが、意識して考えていませんでした。

<夫婦・家族合同面接の難しさと留意点>
  ・  家族全員が同じ目的・動機・意欲で来談しているとは限らない。
  ・  家族と同席していることで、語りにくいことが生じる可能性がある。
  ・  複数のメンバーがいるので、より複雑な観察が要求される。
  ・  セラピストは、セッション中に生じる家族の葛藤・衝突に対処しなければならない。
  ・  葛藤状態にある家族とセラピストとの適切な距離の難しさ。
  ・  セラピストの価値観が家族のいずれかの価値観と似ていて他と大きく異なる時、セラピスト自身の感情的反応に気づき、その影響を適切にモニタリングしていないと、否定的な影響を及ぼす可能性がある。
  ・  もし、家族に内緒で一人で面接を受けに来たいと言われたら、どうしたら良いか。

「セラピストは、セッション中に生じる家族の葛藤・衝突に対処しなければならない」ことの補足説明として、「どのタイミングでとめるかか、が大事」と言われました。家族間の言い争いを、どの時点で介入してとめるか、という意味です。衝突がこれまで顕在化していなかったのなら、少し出させた方がいい、という判断もあり得るということか、と理解しました。

また、最後の項目については、「ケースバイケース」と言われながらも、「パートナーや家族にそのことを話していますか?」「どう言われましたか?」というように、パートナーや家族がそのことを了解していることを要求し、OKなら引き受ける、と言われました。特定の家族との「秘密を共有」することは、その後のセッションを続けて行く上で危険だから、ということでした。それで、「言いたくない」と言われたら、なぜか? と聞く、ということも言われました。

「セラピストの価値観が家族のいずれかの価値観と似ていて他と大きく異なる時」など、確かにそのことをうっすら意識はしていましたが、このように明確に言語化されて、問題がはっきり認識できました。

という流れから、「個人面接と合同面接の併用」(Feldman,1992)を紹介されました。

    ・  対称型:合同面接と個人面接を交互に同じ頻度で実施する。
    ・  非対称合同面接主導型:合同面接をより多く行い、それよりも少なく個人面接を組み入れる。
    ・  非対称個人面接主導型:個人面接を主とし、合同面接を組み入れる。

印象に残ったのは、最後の先生の補足説明でした。特にパートナとのセラピーについてです。「セラピーにくるから関係を維持したいと考えているかどうかは定かではない。修復したいかどうかもわからないから、確認したくてくる場合もある。」なるほど。全くそうですね。最初からセラピストが「関係修復したいのだろう」と決めつけてはいけませんね。その辺りのクライエントの心のひだを丁寧に聴き取って行くことが必要ですね。

この後、東豊先生と野末武義先生のダブル講師によるケーススーパービジョンが行われました。これは、次回。

画像は、自宅の玄関。「Rカフェ」のまねをして、昨年、奈良に帰った時に、壁に時計を取り付けてみました。


心理療法
2017/03/15
KSCC統合的心理療法セミナー(3)ー野末 武義 先生 ②ー  
野末武義先生の講義の続きです。

「3 相互作用システムの次元〜関係性を理解する〜」では、家族構成メンバーの関係を見る、次のような視点を提示されました。
    ・ 刺激と反応の連鎖、問題や葛藤をめぐる悪循環
    ・ コミュニケーション、境界、パワー
    ・ 堅固な相補性
    ・ couple dance (ex.追跡者と回避者のダンス Middelberg,2001/  怒る女性と引きこもる男性Simon,2012)

「カップルにおける相補性」とは、「感情と論理」の点において、妻は感情偏重で夫は論理偏重である場合が多く、これは「愛情飢餓の妻と冷淡な夫」という構図で説明されました。また「関係性と個別性」の点において、妻は関係性偏重で夫は個別性偏重である場合が多い。これら二つともバランスを取ることが求められるのに、いずれもどちらかに偏ることで、固定した二人の関係ができあがる。当人らは意識していないけれど、そういう二人の在り方で、双方の足らない部分を補い合っている、という意味で「相補性」と名付けられたのかなという理解を私はしました。しかし「相補」の意識は当人らにはなく、双方の「違い」(=違うこと)が問題とされていくのです。

次に、夫婦間の葛藤や緊張を回避するために、子どもなどの第三者を巻き込むことで表面的には安定する「三角関係(triangleが生まれるとの話になりました。この時の留意点として、次のことが挙げられていました。
    ・ 一般的に、母親が子どもと密着し、父親が疎遠になる
    ・ 巻き込まれた子どもに症状や問題行動が現れることがある
    ・ 母子関係のみに注目することの落とし穴

さて、その次に見られるのは「迂回連合(detouring coalition)」です。夫婦間の葛藤や緊張を否認し、子どもを問題とすることで表面的・一時的には夫婦は連合する、というのです。この時の問題として、次の点が挙げられました。
    ・ 子どもへの虐待、子どもの非行などの反社会的な問題
    ・ 子どもの問題解決、子どもとの分離に対する親側の不安と抵抗

う〜ん…、「子どもへの虐待、子どもの非行」が生じるのは、なんとなく理解できましたが、次の「問題解決することへの親側の不安」というのには、唸ってしまいました。…そうか、そうなんだ…。子どもの問題が解決してしまうと、今度は自分たちの問題に向き合わないといけなくなるから、限りなく不安になって抵抗するんだ…! この場合、「子は鎹(かすがい)」というより「子どもの問題は夫婦の鎹」ということですね。

「4 多世代家族システムの次元」では、まず「現在に生き続ける過去を理解する」視点として、次のことが挙げられました。
    ・ 世代を超えて伝達されるものは、個人内に内在化され、夫婦の・親子・他者との関係性に影響を及ぼし、次の世代に伝達される。
    ・ 源家族(夫婦それぞれの親との関係)・拡大家族の人間関係・葛藤や問題のパターン
    ・ 家族観・夫婦観・理想
    ・ (後述)破壊的権利付与・親役割代行
    ・原因・犯人を捜すのではなく、痛み・重荷・心理的遺産を共感的に理解し、負担を軽減する(世代間伝達・世代間連鎖から自由になる)

補足説明として、「世代間連鎖を断つ」ということも巷で言われるけれど、「断つ・切る」というのは、まだとらわれがある状態なので、「自由になる・とらわれなくなる」という方がいいということでした。「断つ」というのは「断たなければならない」と必要以上に、そのことを意識している結果の行動だからか…と私は理解しました。

「破壊的権利付与(destructive entitlement)」とは、源家族での体験として、家族とりわけ親から虐待や暖かい肯定的な関わりを受けることができなかった人(親の精神疾患・虐待やネグレクト・親の離婚や死別などはもちろん、もっと見えにくい小さな苦悩の積み重ねによることも)が、その後の人生でそうした苦労を誰かから理解され情緒的にサポートされなかった場合、次のようなことが見られるというのです。
    ・ 子どもやパートナーの欲求、感情、不安、考え方などに対する感受性や関心や配慮の欠如
    ・ 自分の言動が子どもやパートナーにどのような影響を及ぼしているのか、傷つけているのかについて自覚が乏しく、子どもやパートナーとの良好な関係を維持することの難しさ

この場合、そうならざるを得ない過去の体験が現在の否定的言動の根底にあることを理解し、過去の傷つきや痛みを受容し共感的に理解し応答することが必要であるとのことでした。

「親役割代行(parentification)」とは、家族の中で、子どもが(両)親に対して、きょうだいに対して、あたかも親であるかのような養育的な役割を取るような状況になること(短期的or長期的)で、物理的あるいは情緒的に親の面倒を見たり、親の夫婦関係に介入して葛藤を解決しようとする行動を指すようです。両親夫婦のストレスは拡散されますが、子どもが、結果的に自分自身の成長を犠牲にすることになるといいます。なぜなら、アイデンティティが混乱し、対人関係における孤立と融合を生むことになり、配偶者選択や夫婦関係・親子関係に影響するからだというのです。

「5 より大きな社会システムの次元」として、まず、社会的な文脈の理解が必要ということで、次のような視点が示されました。
    ・ 個人・夫婦・家族を取り巻くさまざまな社会システムや人間関係。ストレッサーにも資源にもなりうるもの。
    ・ 社会的経済的状況
    ・ 文化・差別や偏見
    ・ 職場システム・仕事(ex.夫の職場の特徴や子育て家庭に対する理解の程度、通勤時間も)
    ・ 地域社会・友人
    ・ マスメディア(映画・TV・インターネットetc.)
    ・ジェンダー(夫婦とは・仕事とは・浮気とはetc.)
    ・援助システム(専門家・非専門家)

さらに「ジェンダー:夫(父親)を理解し援助する難しさ」として次の6点。
    ・ うつ病の有病率は女性の方が高いが、自殺率は男性の方が高い:2005年の男女比は2.7対1(高橋,2006)
    ・ 男性は女性ほど自ら心理療法を求めない。(Gilbert & Scher,1999)
    ・ 男性は怒り以外の感情を隠蔽する。(中村,2000)
    ・一般的に心理療法では感情の表出が重視されるが,男性は女性ほど感情を表出しない傾向がある:標準的な男性の失感情症(Levant,1998)
    ・悩みを語ることや感情表現:男らしさへの脅威・恥の感覚(Wexler,2009)→妻・母親によって強化され悪循環に陥ることも
    ・ 男性は、セラピーの中で依存的な立場になることに抵抗を示したり、セラピストと競い合うことがある。(Worden & Worden,1998)

ここまでのまとめとして、次の4点。
    ・ 5つの次元は相互に関連し影響を及ぼし合っている。
    ・ どの次元に焦点を当てて介入するかは、心理療法の理論によって異なる。
    ・ どの次元に介入すると良いかは、ケースによって、また治療プロセスによって異なる。
    ・ ある次元に対する間接的な関わりが、他の次元に直接的な影響を及ぼすことがある。ex.子育てに関わらない多忙な夫
 
今日はここまで。次は「個人面接と夫婦・家族合同面接の比較」です。
画像は、広島市西区井口台のキッシュのお店です。



心理療法
2017/03/14
KSCC統合的心理療法セミナー(2)ー野末 武義 先生 ①ー  
関西カウンセリングセンター主催の「KSCC統合的心理療法セミナー」の午後の部は、明治学院大学心理学部の野末武義先生の講義でした。(野末先生はIPI統合的心理療法研究所にも関わっていらっしゃる方だということでした)「個人療法と夫婦・家族療法の統合」というテーマでお話しになり、「個人・夫婦・家族を理解するための5つの次元」を提示され、それぞれについて説明がありました。


「個人・夫婦・家族を理解するための5つの次元」

      1  客観化可能な事実の次元〜ライフサイクル(個人&家族)の視点〜
      2  個人システムの次元
            ①  一人ひとりを理解する
            ②  カップルにおける非合理的思い込み
      3  相互作用システムの次元〜関係性を理解する〜
      4  多世代家族システムの次元
            ①  現在に生き続ける過去を理解する
            ②  破壊的権利付与(destctive entitlement)
            ③  親役割代行(parentification)
      5  より大きな社会システムの次元
            ①  社会的な文脈の理解
            ②  ジェンダー:夫(父親)を理解し援助する難しさ

「1 客観化可能な事実の次元」とは、次のようなものです。
     ・ 個人の属性に関するもの(年齢・職業・教育歴・宗教など)
     ・ 結婚生活に関するもの(交際期間・結婚式・婚姻歴・子どもの有無・居住形態・離婚・再婚など)
     ・ 心身の健康状態(通院や入院など)
     ・ 何があったか(背景)、どのようなプロセスを経てきたか(発達と変化)、何を抱えてきたか、未解決か、今どのような状態か
     ・ 社会的機能(休職・頻回転職・未就職など)

それを、ライフサイクルから見ると、次の二つに分類できるというのです。
     ・ 状況的危機       …一部の家族しか経験しない、予測不可能な危機(家族の急死・事故・失業・災害など)
     ・ 発達課題的危機 …ライフサイクルの移行に伴って平均的な家族が体験する危機で、ある程度予測可能。個人のライフサイクル(エリクソン)+家族のライフサイクル(中釜他,2008)の2つの視点から見る

「2  個人システムの次元」では、まず個々人に対して、次のようなことを理解する必要性が説明されました。
    ・ パーソナリティスタイル(強迫性・演技性etc)
    ・ 感情・認知・不安
    ・ 自尊心・自己愛・防御機制・アタッチメントスタイル
    ・ 症状・問題・葛藤に対する認識の仕方
    ・ セラピー(セラピスト)に対するイメージ・動機づけ・期待・抵抗
    ・ 夫婦・親子・家族に対する価値観・思い込み
    ・ 親密さへの恐怖
 
ここで私は「親密さへの恐怖」に、少し? と思ったのですが、確か、生育過程における親との関係で、何か解決されていない問題を抱えていた場合、親密になることに対して無意識に恐怖を感じて、避ける行動を取ってしまう、というような補足説明がされたと思います。
「アタッチメントスタイル」は、エインズワース(Ainsworth)らの研究で、子どもと養育者の一時的な分離と再開というストレンジ・シチュエーション法による観察により、 乳児の アタッチメント・パターンを「安定型」「不安(アンビバレント)型」「回避型」の3つに分類したものです。親との親密度で乳児の反応パターンが変わるとされています。ここでは、それが成長後にどのような影響を及ぼしているかを取り上げているのだと私は理解しました。

「カップルにおける非合理的思い込み」とは、たとえば次のようなものです。
  ・ 結婚は人を孤独から解放してくれる
  ・ パートナーが自分のことを本当に愛しているのなら、気持ちや考えは言わなくても分かってくれるはずだ
  ・ パートナーとの間で葛藤はなるべく避けた方が良い
  ・ 夫婦であれば、言いたいことは何でも言うべきだ
  ・ 子育てについて夫婦で意見が食い違ったとき、どちらかが間違っている
  ・ 夫婦の関係が良いものになるためには、相手が変わらなければならない
  ・ パートナーが頼りにならないとき、子どもや実家の親に頼るのは当然だ

こういったことを頑なに思っていると「問題」になってくるというのです。「違うこと」が問題なのでなく、「違うことをどのように夫婦で共有できていくかが大切」と野末先生はおっしゃいました。なお、「察してくれて然るべき」というのは、何も日本文化特有のものではなく、カップルセラピーが生まれたアメリカにもあるとのことです。そこでも、「お互いの弱い(=悲しみ、怒り)感情を、どう上手く表現して受け入れられるか」が扱われている、とのことでした。

まとめ始めると長くなってきたので、一旦、ここで置きます。続きは、明日。(東豊先生のが長くなり過ぎた反省を踏まえて。)

画像は、3月11日にお誕生日を迎えた広島の友人に送った、プリザーブドフラワー。震災以降、お誕生日が素直に祝えなくなってしまった、と悲しんでいたので。(震災以前に生まれているものね、それはそれ、とお祝いに。)



心理療法
2017/03/13
KSCC統合的心理療法セミナー(1)ー東豊先生ー  
昨日は関西カウンセリングセンター主催の「KSCC統合的心理療法セミナー」に参加しました。全6回で構成されたセミナーの、最後の回ということでした。テーマは「統合的心理療法とシステムズアプローチ」で、家族療法家の二人の先生からの、それぞれ1時間半の講義の後、「W講師によるケーススーパービジョン」が行われました。

まず午前の部は、「会話で新しい現実を作るーシステムズアプローチ、家族療法、ブリーフセラピー」と題された、龍谷大学文学部教授の東豊先生の講義でした。今回の講義は、システムズアプローチの観点から
   ※「問題」とは何か
   ※ 効果的な援助とは何か
   ※ 効果的なコミュニケーションの方法とはどのようなものか
を明らかにする、という目的が明示されました。

東先生がシステムズアプローチの原理原則として示されたのは「『現実』は会話(相互作用)によって作られる。言い換えれば、作り変えることができる」ということです。私たちの身の回りにある「真実・現実」とは、人々があるものを「認識し(=注目し)」「思考し(=意味付けし)」「言葉にする(=コミュニケーションする・行動する)」というプロセスを経て、あたかもそれが「真実・現実」であるかのように構築されたものにすぎない、という社会構成主義の立場を取っているのです、と説明されました。それが、システムズアプローチの「哲学」だと。

そういう視点に立つと、「◯◯が原因である」、「◯◯が問題である」などといった現実もすべて当事者たちによって構成されたものである。それには、時代や文化の影響も大きい、というのです。ですから、
   1  何が当事者に注目され
   2  どのように意味付けされ
   3  どのようなコミュニケーション(行動)によって増幅されているか
を見ていくことで、親子、夫婦といった家族のシステムを硬直させているものが明らかにできる、というのです。

ここで、私にはゲシュタルト療法でおなじみの「図と地の反転の絵」が示されました。「どこに着目するかによって見えてくるものが異なる絵」です。これを提示しながら、東先生は「全部与えられている、全員、平等に。」という言い方をされました。与えられたもののうち、見る者・物によって全て(=現実)は変わる。それは、意味づけるものが違うからだと。

以上のことから、援助的関わりとは、会話によって当事者の「現実」を再構築(=脱構築)すること。これを治療的会話と言うのだそうです。ただし、この治療的会話とによって生み出される、新しい「現実」は、「希望」「安心」等につながるものであることが必要だと言われました。それは心理療法として当然のことですね。

現実の再構成(=脱構築)のために必要な技術とは、「ジョイニング」と「リフレーミング」。

Joining(ジョイニング)とは、相手に溶け込むこと、合わせること、その相互作用のプロセスを指す、とのこと。つまりは、相手の、既存の「構成された現実の」や「コミュニケーションのルール」を受け入れること。それには、技術よりも心構えが重要で、治療者側が「問題」を作らないこと。「Positive Connotation(ポジティブ・コノテーション)を持つこと、つまり、「常に相手を肯定的に見ること」が必要だというのです。

クライエントの価値観がどうしても受け入れられず、ジョイニングが困難な場合は、他の人にリファーすることが必要、と言われました。 どんな人でも万能ではなく苦手とするクライエントのタイプもある、そこを無理しないで手放すこと、それは恥ずかしいことでもなんでもない、と言われました。
確かに、自己一致してそこに存在することがセラピストの存在意義であるなら、手放すことがお互いのためなのだと素直に受け止められました。

Reframing(リフレーミング)とは、相手の枠組みを変えるための働きかけ、相手の「現実構成」を変える試み、その相互作用のプロセスを指す、とのこと。つまり、相手の注目点を変えてみることで意味を変え、「問題」をシフトしたり「原因」をシフトしたりすること。

実際の治療的会話は、ジョイニングとリフレーミングを行ったり来たりしながら、少しずつ「新しい現実(=新しい物語)」を作っていく、というセラピストとクライエントの共同作業であり、合意形成のプロセスである、と。

この後は、20分間の模擬面談のVTRを視聴し、夫婦で来られたクライエントに対して、どのような関わりが展開されていったかを見ました。これまで個人カウンセリングは経験あるけれど、複数人のカウンセリングは初めて、というカウンセラーさんがチャレンジされたものでした。どの辺りで行き詰まりに入っていったかを、途中、一時停止しながら検証しました。

設定は、子どもが就職して夫婦二人になって、今後何年かのちの夫の定年を見据えて、妻が働きに出たいというのを夫が拒んで、家庭内は険悪なので、なんとかしたいという妻の主訴でした。

このVTRで興味深かったのは、カウンセラー側の「気持ち」がカウンセリングに多大な影響を与えるということ。実際に後でカウンセラー役をされた方に聞いたら、夫に対して最初から「ああ、嫌なオヤジ、奥さんかわいそう」という感情を持ったそうなのです。そうすると、「夫婦二人がもめている」のではなく、「三人がもめている」、もっと言うと、「カウンセラーがこの二人をもめさせている」と見るべきなのだと。それはカウンセラーが「問題を作っている」のだと言うのです。「ああ、嫌なオヤジ」と思うから、問題が現象化してくる、と。だから、カウンセラーは、常に自分をモニタリングする必要があると。これが、最初に話された「治療者側が問題を作らない」ということの事例だったのです。

今回のケースでは、ケンカをさせない、ケンカになりそうになったら、どうブロックするかが課題だった、と言われました。それは、リフレーミングの邪魔になるから、だそうです。このケースでは、「理解のない夫」から「変化に弱い夫」にリフレーミングし、それを二人が納得すること。「変化に弱い夫」という見方を妻が共有してくれるか、という点に落とし込んでいく、と言われました。

VTRでは引き続き、20分で東先生がカウンセラーをして見せてくださるカウンセリングとなりました。
その際、夫婦二人を前にして「確認しておきたいのですが、離婚を考えていらっしゃる、ということはないですね? カウンセリングの目的は、お二人の関係をいいものにしていくこと、それでよろしいですね?」という確認をされていたのも印象的でした。このカウンセリングは、何のために行うのか、もちろん当初の目的と異なってくることもあるかもしれませんが、クライエント双方にとって合意できる地点をこのように確認しておくことは、嫌々ながら連れられてきた側のクライエントが、中断することにならない手立てとみました。

そのVTR視聴後に、今後の留意点として、「今回作った枠組みを絶対崩さないこと」を言われました。リフレーミングには必ず「揺り戻し」が来るけれど、決してそれに乗ってはいけない、今回作った「変化に弱い夫」を双方が受け入れながら、双方が自分らしく羽ばたいていけるように支援すること。

いやあ…ホント目から鱗、でした。VTRで、カウンセラー役が夫とのやりとりが行き詰まってきて、チラッと妻の方を見るのですが、先生は、「ほら、気づきましたか? カウンセラーが妻にアイコンタクトを送りましたね? それで妻の夫に対する攻撃がまた始まりましたね?」と、カウンセラーの何気ない(あるいは無意識の)行動が何を引き起こしたか、ということを見る視点もいただきました。指摘されないと気づきませんでした。

また、今回のケースでは、カウンセラーの価値観は別にあったとしても、カウンセリングの流れとして必要ならば、夫の価値観に同意してみせる(「我々の年代のような男にはありがちですよね」というような、夫に寄り添った発言)こともする、と言われました。個人カウンセリングの在り方からいえば、「誠実」でないという意味で、とんでもないことかもしれないですけど、と。

ですが、私はその後少し個人的にお話しに行って、「自己一致、を何に対してするか、という問題だと思うのですが、私は先生はシステムズアプローチを成立させるということを何よりも大切にされていて、それに対して自己一致されているんだと思います」と申し上げたら、「そういう理解の仕方は私にはなかったから、とても嬉しい」とおっしゃいました。

濃密な1時間半でした。

画像は、その後ランチを取った、会場近くの喫茶店です。

カウンセリングルーム 沙羅Sara

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