けれど、大人になって気づいたことは、そんなに根っこの部分が変われるわけない、ということでした。
そんなに落ち着いていられるわけでもないし、そんなに賢くなれるわけでもないし、そんなに上手にあれこれができるわけでもない…。
ホントのところ、随分がっかりしました。
…なんだ、子どもの延長に大人の私がいるだけじゃない…!
まあ、あたりまえのことなんですが。子どもの時分に自分が嫌いだった私は、「大変身」したかったのです。
青虫が蝶になるように。綺麗になって、心に暗闇を抱えている私から脱皮したかったのです。
そんな「大変身」は叶いませんでしたが、子どもから大人に移行するというのは、どうも、中心部分に子どもの私を抱えながら外側の殻をどんどん作っていくようなイメージを、いつからか持つようになりました。
大事な大事な子どもの感性は奥にしまっておいて、それを守るように殻ができていく…。
そんな時、茨木のり子の「汲(く)む」という詩に出会いました。「読書への誘い」の第14号で紹介した詩です。
「汲む —Y・Yに— 」 茨木のり子
大人になるというのは
すれっからしになることだと
思い込んでいた少女の頃
立居振舞の美しい
発音の正確な
素敵な女のひとと会いました
そのひとは私の背のびを見すかしたように
なにげない話に言いました
初々(ういうい)しさが大切なの
人に対しても世の中に対しても
人を人とも思わなくなったとき
堕落が始まるのね 堕ちてゆくのを
隠そうとしても 隠せなくなった人を何人も見ました
私はどきんとし
そして深く悟りました
大人になってもどきまぎしたっていいんだな
ぎこちない挨拶 醜く赤くなる
失語症 なめらかでないしぐさ
子供の悪態にさえ傷ついてしまう
頼りない生牡蠣(なまがき)のような感受性
それらを鍛える必要は少しもなかったのだな
年老いても咲きたての薔薇 柔らかく
外にむかってひらかれるのこそ難しい
あらゆる仕事
すべてのいい仕事の核には
震える弱いアンテナが隠されている きっと……
わたくしもかつてのあの人と同じくらいの年になりました
たちかえり
今もときどきその意味を
ひっそり汲むことがあるのです
(詩集『おんなのことば』童話屋・1994年刊)
ああ、同じことを考えている先人がいた!という気持ちでした。
私の、気持ちの落ち着かなさや、考えなしのことをしてしまう愚かさや、いろんなことを上手に捌けないことや、…全部全部、そのまま持っていていいんだ…。
だって、殻を作って守ってあげられる知恵は、大人になると少しはできてくるものだから。
と、ちょっと安心したのでした。
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