折々のことば。2022年6月19日と6月20日の、やなせたかしの言葉。
#2013
正義は或る日突然逆転する。
正義は信じがたい。 やなせたかし
鷲田清一の解説。
戦中の軍隊生活と戦後の社会を生きて、このことを骨身で悟ったと漫画家は言う。
「正義のために戦うのだから生命をすてるのも仕方がない」のでは断じてない。
命を捧げうる別の正義を謳(うた)うのも自分は拒む。
完全無欠の人だけに可能な大げさな正義ではなく、飢えた人がいればそっと一片のパンを差し出すこと。
それがアンパンマンの原点だと。
『アンパンマンの遺書』から。
#2014
ほんとうの正義というものは、けっしてかっこうのいいものではないし、そして、そのためにかならず自分も深く傷つくものです。 やなせたかし
鷲田清一の解説。
漫画家は、最初に発表された絵本「あんぱんまん」のあとがきにこう記した。
飢えた人がいると、自分の顔を食べさせる「あんぱんまん」。
自分も弱くて頼りないのについ捨て身で動く。
が、問題は大き過ぎてその行動も応急処置にしかならない。
その頃にマントがぼろぼろなのもそういう訳だったのか。
『アンパンマンの遺書』から。